「大学ブランディング戦略の成功事例5選と実施ステップ」

少子化や進学先の多様化が進む中、大学を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。そのような状況下で重要性を増しているのが「大学ブランディング」です。 大学ブランディングとは、単にロゴやビジュアルを整えることではなく、「どのような大学を目指すのか」「どんなキャンパスで、どんな学びができるのか」といった本質的な価値を明確にし、学内外へ一貫して伝えていく取り組みを指します。 特に高校生や保護者にとって、大学選びの判断材料は年々増えています。入試制度、学部構成、立地、キャンパスの雰囲気など、比較される要素が多いからこそ、大学として「何を強みとして打ち出すのか」を整理し、認知度を高めていくことが欠かせません。 ブランディングは一部の広報施策ではなく、学内全体で共有される意識として始めることが重要です。

01　大学におけるブランディングの定義と基本的な考え方

大学ブランディングとは何か

大学ブランディングとは、大学が持つ独自性や価値を明確にし、それを高校生・在学生・卒業生・教職員といった関係者に伝え、共通のイメージとして定着させていくプロセスです。 「どんな学生に来てほしいのか」「社会にどんな人材を輩出したいのか」といった視点から、大学としての立ち位置を言語化することが出発点になります。 まず重要なのは、他大学との差別化につながる強みを把握することです。教育内容、研究分野、キャンパス環境、学長のメッセージ、学内で行われている特色ある取り組みなど、大学ごとに必ず“語るべき資源”があります。それらを整理し、ブランドメッセージとしてまとめることで、大学の方向性が明確になります。 次に、ターゲットとなる学生層を明確にすることが欠かせません。高校生の進路意識は多様化しており、「なんとなく知られている大学」よりも、「自分に合っていそうな大学」が選ばれる傾向があります。オープンキャンパスやセミナー、Webサイト、入試関連の情報発信など、接点ごとに一貫したメッセージを展開することで、大学の認知度と理解度を高めることができます。 また、大学ブランディングは学外向け施策だけで完結するものではありません。学内での共有や意識づくりも非常に重要です。教職員一人ひとりが大学の目指す方向性を理解し、日常の教育やコミュニケーションの中で体現していくことで、ブランドはより強固なものになります。 「知られている大学」から「選ばれる大学」へと進化するために、大学ブランディングは継続的に取り組むべき戦略と言えるでしょう。

ブランディングの基本概念

ブランディングの基本は、「大学という存在をどう認識してもらうか」を設計することにあります。まず重要なのが、大学の認知度を高めることです。どれほど魅力的な教育内容やキャンパス環境を持っていても、存在や意味が知られていなければ選択肢に入りません。広告や大学案内、Webサイトなどを通じて、一定の印象を継続的に与えることが、ブランディング構築の第一歩となります。 次に必要なのが、価値提案（バリュープロポジション）を明確にすることです。この大学で学ぶことで、学生は何を得られるのか。その学びは将来にどうつながるのか。教育内容、サポート体制、卒業後の進路などを整理し、「この大学ならではの価値」をコンセプトとして言語化することが重要です。これはマーケティング施策全体の軸にもなります。 さらに、競合分析も欠かせません。全国には多くの大学が存在し、似た分野・テーマを掲げる学校も少なくありません。他大学のブランディングや広告表現を把握した上で、自校がどの位置にいるのかを客観的に見ることで、差別化の方向性が見えてきます。 ブランディングとは感覚的な表現ではなく、目的を持って構築される戦略であるという理解が、成功への土台になります。

02　大学にブランディングが求められる理由

競争が激化する教育市場

現在の教育市場では、大学間の競争が年々激化しています。少子化の影響により18歳人口は減少傾向にあり、全国の大学が限られた学生を募集する状況が続いています。その中で、「どの大学に入学するか」は、学生や保護者にとってより慎重な判断になっています。 このような環境では、単に教育を提供しているだけでは選ばれません。学部や分野ごとの特色、教職員の体制、新しい教育プログラムなどを整理し、他校との違いを明確に分けて伝える必要があります。差別化戦略を持たない大学は、比較の中で埋もれてしまうリスクが高まります。 だからこそ、大学のブランド価値を上げる取り組みが重要です。ブランド価値が高まることで、「この大学なら安心できそう」「期待できそう」といった印象が生まれ、募集活動や広報施策の効果も高まります。教育市場における競争を正しく理解し、その中で自校の立ち位置を築くことが、大学ブランディングの大きな役割です。

学生の選択肢の多様化

現代の学生は、かつてに比べてはるかに多くの選択肢を持っています。大学進学は当たり前ではなくなり、専門学校、海外留学、就職など、18歳の進路はさまざまです。高校生や受験生は、自分の将来を見据えながら「どこで、何を学ぶか」を選ぶようになっています。 そのため、学生ニーズを正確に把握することが不可欠です。どのような学びに関心があるのか、卒業後にどんなキャリアを目指しているのか。多数の選択肢の中で選ばれるためには、大学側から積極的に魅力を伝える必要があります。 専門性の高い学び、キャリア支援、卒業生の活躍事例などを通じて、「この大学で学ぶ意味」を具体的に示すことで、ブランドの魅力は高まります。学生が「ここで学びたい」「ここを選びたい」と感じられるかどうかは、情報の伝え方次第です。変化する学生の意識に対応するためにも、大学ブランディングは欠かせない施策と言えるでしょう。

03　大学ブランディングの実施ステップ

ステップ1：現状分析と目標設定

大学ブランディングを始める際、最初に行うべきなのが現状分析です。研究実績、教育内容、広報活動、SNSでの発信状況など、大学が現在どのような評価を受けているのかを整理します。内部の強みや課題を把握することで、ブランディングの方向性が見えてきます。 あわせて、競合他校のブランディングも調査します。他大学がどのようなコンセプトや企画を打ち出しているのかを知ることで、自校の立ち位置を客観的に確認できます。トップ校の事例だけでなく、同じ分野・規模の大学を見ることも重要です。 その上で、「認知度を高めたい」「志願者数を増やしたい」など、目的を明確にした目標設定を行います。現状と目標を結びつけることで、ブランディングは感覚的な取り組みではなく、戦略的な施策へと変わります。

ステップ2：ブランドメッセージの策定

次に行うのが、ブランドメッセージの策定です。大学のイメージを形づくる言葉やテーマを整理し、どのような印象を持ってもらいたいのかを明確にします。教育方針や大学の価値観を洗い出し、それを一貫したメッセージとしてまとめることが重要です。 特に18歳の学生や保護者に向けた発信では、難しい表現よりも直感的に伝わる言葉が求められます。パンフレット、Webサイト、記事コンテンツなど、媒体ごとに表現を変えつつも、根底にあるテーマは統一する必要があります。 マーケティングやトレンドを意識しながら、誰に、何を、どう伝えるのかを整理することで、ブランドメッセージはより強固になります。一貫性のある発信は、大学への信頼感を高める大きな要素です。

ステップ3：コミュニケーション戦略の構築

最後に重要なのが、コミュニケーション戦略の構築です。大学のブランドを伝えるためには、Webサイト、SNS、イベント、進学相談会など、複数のチャネルを組み合わせて活用する必要があります。それぞれの接点で、ターゲット層に合った情報を届けることが求められます。 例えば、キャリアや将来を意識する学生には実践的な学びや卒業後の進路を、保護者には教育環境やサポート体制を伝えるなど、コンテンツを使い分けることが効果的です。また、相談や問い合わせ、反応などのフィードバックを重視し、対策や戦略を柔軟に見直していく姿勢も欠かせません。 ブランディングは一度作って終わりではありません。継続的な改善と開発を重ねることで、大学のブランドは少しずつ育っていきます。これまでの取り組みをまとめ、次の施策へとつなげていくことが、長期的な成功につながります。

04　大学の魅力を可視化するストーリーテリング

ストーリーテリングの効果

ストーリーテリングの最大の効果は、感情に訴える力にあります。人は論理だけでなく感情によって意思決定を行います。学生や保護者が大学を選ぶ際も、「ここで学ぶ姿を想像できるか」「人として成長できそうか」といった感覚が大きな影響を与えます。インタビュー記事や動画を活用し、実際の体験や想いを伝えることで、心に残るメッセージになります。 また、物語形式で情報を伝えることで、記憶定着を促進できる点も重要です。カリキュラムや制度の説明だけでは忘れられがちですが、具体的な成功体験やエピソードとして伝えることで、内容が印象に残りやすくなります。相談会やオープンキャンパスでの説明にも、ストーリーの要素を取り入れると効果的です。 さらに、ストーリーテリングは大学のブランドイメージを強化する役割を果たします。どのような人材を育てたいのか、どんな未来を目指しているのかを一貫した物語として伝えることで、大学の姿勢が明確になります。Web記事、動画制作、外部への発信を依頼する際も、ストーリーの軸を設定しておくことで、ブレのない伝え方が可能になります。

成功事例の紹介

ストーリーテリングの有効性を伝えるためには、具体的な成功事例の紹介が欠かせません。実際の大学名やプロジェクト、取り組み内容を挙げることで、読者にとって現実的で参考になる情報になります。特に地域に根ざした大学や、特色ある教育を行っている事例は、多くの大学にとってヒントになります。 成功事例を紹介する際は、学生・教職員・卒業生といった多様な視点を取り入れることが重要です。学内での体験、地域への貢献、卒業後の活躍などを組み合わせることで、大学が社会にどのような価値を提供しているのかが立体的に伝わります。実際の声や体験談は、ストーリーに説得力を持たせます。 さらに、成果を数値で示すことも欠かせません。入学者数の増加、志願倍率の改善、就職率の向上など、実績をデータとして提示することで、ストーリーテリングが単なる感動話ではなく、課題解決につながる手法であることを示せます。 こうした成功事例を一覧として整理することで、大学ブランディングにおけるストーリーテリングの有効性と未来への可能性を具体的に伝えることができます。

実績01｜羽衣国際大学

「“普通の大学案内”から、“人生が動くストーリー”へ」






Before
・学部紹介・制度説明が中心
・大学の強みはあるが、高校生に“自分ごと化”されにくい
・パンフレットやWebが「情報提供」で止まっていた

After
・学生一人ひとりの変化にフォーカスしたストーリーテリングへ転換
・「どんな学生が、どう変わったのか」を主役に据えた構成
・パンフレット／Web／動画を横断した一貫メッセージを設計

実績02｜高知健康科学大学

実績03｜福井工業大学

ブランドスローガン
『2050年大学』
未来は、遠い目標ではなく
「すでに、ここで始まっている」
福井工業大学が担うべき役割を
“学部紹介”ではなく
社会に向けたミッションとして再定義。

実績04｜金沢大学

未来知実証センター
「研究は、飛び立つ準備ができている── 大学発イノベーションの“空港”をつくる」



コンセプト
INNOVATION FLIGHT
イノベーション・フライトの出発地は、現在の社会（未来の課題）。
目的地は、課題を解決した未来社会。未来知実証センター（空港）を訪れれば、さまざまな目的地＝未来ビジョンを見ることができる。

実績05｜北陸大学

「大学を見に行く、から── 未来の自分に会いに行くオープンキャンパスへ」



企画コンセプト
『未来のあなた診断会』
高校生が
「大学を見る」のではなく、
「未来の自分を考えに行く」
オープンキャンパスへ。

来場する理由そのものを企画化することで、
オープンキャンパスを
意思を持って訪れるイベントへと再定義しました。

05　大学ブランディングの未来展望

デジタル化がもたらす新たなチャンス

現代において、大学ブランディングとデジタル化は切り離せない関係にあります。ウェブサイトやSNSを中心としたオンラインプレゼンスの強化は、大学の価値を伝えるうえで欠かせない要素となっています。 デジタルを活用することで、新しいサービスや情報提供の形が可能になります。動画やインタラクティブなコンテンツを通じて、大学の魅力をより直感的に伝えることができ、潜在的な学生や地域との接点も広がります。 さらに、データ分析を活用すれば、どの情報がどの層に届いているのかを把握しやすくなり、戦略的なアプローチが可能になります。変化の激しい時代だからこそ、デジタルを活用したブランド向上への期待は今後さらに高まっていくでしょう。

持続可能なブランド戦略の構築

将来を見据えた大学ブランディングでは、持続可能性の視点が欠かせません。環境への配慮を示す取り組みや、地域・企業との連携は、大学の姿勢を社会に伝える重要な要素です。 大学経営の中で、環境や社会への責任をどう果たしているのかをPRとして発信することで、ブランドイメージはより立体的になります。地域社会と連携した活動や、企業との共同プロジェクトを通じて、大学が社会にどのような価値を持っているのかを示すことができます。 また、学生の声を積極的に取り入れることも重要です。運営や施策に学生の意見を反映することで、実態に即したブランド戦略が可能になります。 持続可能な視点を持ち、時代の変化に対応しながら進化し続ける大学こそが、これからの社会に必要とされる存在だと言えるでしょう。

06　まとめと今後のアクションプラン

大学ブランディングの重要性を再確認

ここまでご覧いただいたとおり、大学ブランディングは単なる広告表現やデザインの話ではありません。大学がどのような学びを提供し、社会にどのように貢献していくのかを伝えるための、信頼構築の基盤です。 ブランドが確立されることで、大学に対する印象や評価は明確になり、高校生や保護者にとって「選ぶ理由」が生まれます。数多くの大学が存在する中で、認知度を高め、注目される存在になるためには、大学としての姿勢や価値を一貫して示し続けることが重要です。 また、大学ブランディングは学外向けだけでなく、学内にも大きな影響を与えます。教職員や在学生が大学の方向性を共有し、自ら語れる状態になることで、ブランドは内側からも強化されていきます。 大学ブランディングとは、競争力を高める手段であると同時に、大学そのものの存在意義を社会に伝える活動だと言えるでしょう。

次のステップに向けた具体的なアクション

大学ブランディングを実際に進めていくためには、いくつかの具体的なステップを踏む必要があります。まず重要なのが、ターゲット層の明確化です。高校生を中心に、どのような層に向けて価値を届けたいのかを把握することが、すべての取り組みの出発点になります。 次に行うべきは、独自の価値提案の策定です。他大学と比較したときに、自校ならではの学びや強みは何か。それを一言で説明できる状態にすることがポイントです。価値提案が明確になれば、伝える方法やコンテンツの方向性も定まります。

最後に、コミュニケーション戦略の強化です。Webサイト、SNS、オープンキャンパスなどを通じて、ブランドメッセージを実際の行動や体験として届けていきます。取り組みを一覧化し、効果を確認しながら改善を行うことで、ブランドは未来に向けて育っていきます。 大学ブランディングは一度で完成するものではありません。実現したい姿を描き、具体的な行動を積み重ねていくことが重要です。必要に応じて専門家に依頼しながら、自大学に合った方法で取り組みを進めていくことが、持続的なブランド力向上につながります。